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欧米でのオンライン診療向ソリューション実装事例

2022.11.01 デジタルヘルス

  コロナで遠隔医療が進んだことは広く知られている。今回は、オンライン診療がコロナ前と比べてどの程度ふえているかを見た上で、オンライン診療にあたって、利用者が現在の症状のチェック、オンライン診療予約と診療、薬の手配、その後のフォローという一連の流れを患者がスマホアプリで行えるシステムをコロナの始まる前から実装していたイギリスの NHS (国の医療サービス) の例を紹介したい。

(1)オンライン診療の利用頻度の推移

 手元にある資料では、米国の例だが、下図のようにオンライン診療(テレヘルス)による医療費の四半期での支払件数は、コロナ前の2万件程度から、ピークのQ2 2020で7370万件と急増し、その後はゆるやかに減少し、最近の四半期では4000万件から5000万件の範囲内で落ち着いている。この資料のデータで計算すると、オンライン診療の比率は、ピーク時で15%程度で、Q1 2022では7%程度まで落ちている。

(2)イギリスでのオンライン診療用スマホアプリ実装例

 イギリスでは、国の健康保険制度があり、医療費は基本的に国が負担し、実際の医療サービスは、NHS(National Health Service)が提供する。
NHSは、地域ごとに医療サービスを提供しており、イングランドのロンドンを中心とした一部地域では、住民が医療サービスを受ける1つのオプションとして、スマホを使ったGP at Handというオンライン診療サービスがある。  

 GP at Handは、Babylon社(イギリス本社)がシステムのプラットフォームの提供、並びにオンライン診療優先のプライマリーケア(英国ではかかりつけ医の診察)の医療サービスを提供する。このサービスの歴史は古く、コロナより前の2015年にロンドンでスタートし、その後他地域にも広げた。2021年8月には、NHSのかかりつけ医サービスで初めて登録者が10万人を超えた。
 以下の図と説明のように、住民は、スマホを使ってオンライン診療の受診が、予兆のチェック、オンライン診療の予約と診療、薬の手配という流れで行える。

① 予兆のチェック
  即座に病気の兆候をチェックし、必要な健康情報を提供する。
② ビデオ診療の予約
  初診医のアポを時間を問わず、通常2時間以内の時間帯に設定する。
③ 薬の処方と手配
  薬は近くの薬局で引取るか無料での宅配となる。
④ 医療データの表示
  即座にこのAPが保有している各自の健康に関する記録、薬の処方箋、身体の健康
  状態などを表示する。
⑤ 健康状態診断と将来の予測
  Q&Aで現在の健康状態と将来の病気になるリスクにつき質問できる。

 ただし、今年の夏、Babylon社は、採算の問題から一部の地域でのサービスのとりやめ、ロンドンでのサービス提供にフォーカスするとの趣旨の発表を行った。なお、Babylon社は、本社はロンドンだが、2021年にニューヨーク証券市場に上場しており、イギリス国外では、米国を中心にビジネス拡大を図っている。

(3)今後

 上記のGP at Handのソリューションを提供しているBabylonや米国のeVisit、Zyter、Qure4u、Teladoc Health などの会社は、上記のようなオンライン診療のサポート機能に加え、リモートにあるウェアラブルなどの機器を用いた患者のモニタリング、電子カルテシステムとの連携、更には身体の健康を促進するための情報提供などの機能強化を競っている。今後の更なるイノベーションが期待される。